賃貸借契約の締結で特に重要な二つの書類、重要事項説明書と賃貸借契約書について説明します。
今まで聞いていた条件と契約書の内容が合っているか必ず確認するようにしてください。

最初にもらった物件資料と照らし合わせて見るようにすると良いと思います。

 

 

契約書に署名する前に知っておいてほしいこと

重要事項説明書と賃貸借契約書はとても重要な書類です。
これに署名するということは、この内容で了承したということになります。

例えば、最初にもらった物件資料に「エアコン付き」とあっても、重要事項説明書と賃貸借契約書に「エアコンは付いてない」と記載があれば、エアコンは付いていなくても良いことになります。極端な話、物件資料に「家賃5万円」とあっても、重要事項説明書と賃貸借契約書に「家賃10万円」とあれば、家賃は10万円になってしまいます。

物件資料と重要事項説明書や賃貸借契約書の内容が同じとは限りません。
必ず内容を確認してから署名をするようにしてください。

各書類の説明は以下にありますが、全体として

  • 初期費用はいくらか
  • 毎月払うお金の総額はいくらか
  • 更新はどうするのか(学生など、退去時期と更新時期が重なる予定の人は特に確認してください)
  • 必要な設備は「設備」として記載されているか
  • 楽器やペットなど必要な条件は許可されているか
  • 退去の注意事項

は必ず確認してから署名をしてください。

項目の説明については賃貸物件資料のチェックポイントもあわせてご覧ください。



重要事項説明書

重要事項説明書とは、賃貸借契約の内容で特に大切な事項をまとめた書類です。

賃貸借契約では、宅地建物取引士が重要事項説明を行うよう法律(宅地建物取引業法第35条)で定められています。
「賃貸借契約書は量が多すぎて全部読めない!」という人も重要事項説明書だけは必ず目を通すようにしてください

重要事項説明書で特にチェックしなければならないポイントを簡単にまとめました。

登記簿に記載された事項
抵当権・根抵当権が設定されている場合、将来競売などの問題が起こる可能性があります。

抵当権とはいわゆる担保のようなものです。

アパートやマンションは建てるにしても買うにしても高額ですから、物件の所有者は銀行などからお金を借りるケースがほとんどです。お金を貸した銀行(債権者)はその借金の担保として抵当権を設定するのです。
抵当権を設定することによって、万が一の場合は他の債権者よりも優先的に弁済を受けることができ、もし返済が滞ったら銀行はその物件を取り上げることができます。

借金を一つするごとに設定する抵当権と違い、根抵当権は借金の上限(極度額)を設定します。その上限までなら何度でも貸し借りができるのが特徴です。


では、抵当権が実行され競売となった場合、具体的にはどうなるか。

物件の所有者が借入金を返済しないと、銀行などの債権者は物件を競売にかけます。
競売によって新しい所有者が決まると、それまで結んでいた賃貸借契約は終了し、今後は新所有者の意向に従うことになります。新所有者の意向はだいたい次の2つに別れます。


【新所有者の意向 その1 引き続き入居してほしい】

新所有者が現入居者の継続入居を希望する場合は、今度は新所有者との賃貸借契約を締結することになります。更新ではなく新たな契約ですので、住民票などの書類を求められたり、家賃の変更や敷金などの諸経費を再度請求されることがあります。


【新所有者の意向 その2 退去してほしい】

新所有者からの退去を求められた場合、6ヶ月以内に物件から退去しなければなりません。この6ヶ月の猶予期間中に新所有者に賃料等相当額(賃貸契約を結んでいませんので、賃料とはならず「賃料相当額」となります。通常は毎月払う家賃のようなものです)を支払わなくてはならず、その支払いを1ヶ月以上怠った場合には猶予期間そのものが認められなくなります(民法第395条)。
引っ越し費用や立ち退き費用といったものについては新所有者には払う義務はありませんので、基本的には無条件で退去しなければいけません。



【競売時の敷金】

競売によって所有者が変わった場合、預けていた敷金は新所有者へ引き継がれません。ですから、敷金の返還は以前の所有者へ求めることになります。ただし、前所有者は競売になるくらいですからお金がないことも多く、確実に返還されるとは限りません



抵当権については内容がちょっと怖いので心配になりますが、抵当権設定されている物件は珍しいことではありません。どちらかといえば抵当権設定されていない物件のほうが少ないと思います。その中で、競売まで発展するケースはそう多くはないので、それほど気にすることはないと思いますが、心配な人は不動産会社に所有者の財政事情などを聞いておくと良いと思います。
ただし、差押え登記がされている場合は、入居したら即退去ということもありえますので必ず確認してください。



建物の設備の整備状況
物件に付いている設備が記載されています。
通常、この設備欄で「有」になっているものは、壊れた場合の修理・交換は貸主負担になります。

契約前にもらった物件資料や不動産会社から「有」と言われていた設備が「無」になっていた時は必ず不動産会社に確認してください。
設備に関しては「備考」や「特約事項」欄にも記載されていることがありますので、そちらもあわせてチェックしてください。

ちなみに「貸与」は設備ではありません。「貸与」とある物については修理や交換をしてもらえない可能性があります。

詳しくは設備が壊れたときの費用負担



借賃料および借賃料以外に授受される金額
今回の賃貸借契約と家賃等についてです。

家賃の他に口座引落手数料や家賃保証費用がかかったりすることがあります。「毎月支払う総額はいくらか」を必ず確認してください。



契約の解除に関する事項
貸主への退去の連絡をいつまでにするか、などが記載されています。1~2ヶ月前予告が一般的です。
「退去月は家賃の日割計算をしない」旨の記載があるときは、退去月はたとえ1日で退去しても丸々1ヶ月分の家賃が発生します。

詳しくは退去予定の連絡



損害賠償の予定または違約金に関する事項
家賃の延滞や何かあった場合の違約金に関する事項です。短期で退去するときにかかる短期違約金などがある場合はここに記載されます。


契約の種類、期間、更新に関する事項
契約の種類、更新(定期借家契約は無し)など。

契約の種類は、更新のある普通賃貸借契約(一般賃貸借契約)、更新のない定期借家契約が主です(賃貸借契約の種類)。

契約の開始日=入居できる日になります。
契約開始日にあわせて火災保険の開始日を決めているので、「契約開始日より前だけど荷物だけでも部屋に運んでおきたい」などという要望は通常受け入れてもらえません。
荷物を早めに搬入するなら、その日にあわせて契約開始日を設定してください。

更新はモメる原因となりますので、必ず確認するようにしてください。
更新についてはこちら



用途その他利用制限に関する事項
ペット禁止、楽器演奏禁止など利用の制限が記載されています。自分に必要な条件が禁止されていないか確認するようにしましょう。

ペット可、楽器可物件の場合は、その旨がきちんと記載されていることを確認してください。
ペットや楽器は揉める原因になりやすいので、担当者から口頭で「大丈夫です!」と何度言われても、必ず文書で証拠を残すようにしてください。



敷金・一時金の精算に関する事項
敷金など退去時の精算についてです。
敷引(原状回復費用などの名目で請求されるが、敷金とは違い一切返還されない費用)があるかもチェック。
詳しくは敷金と原状回復

曖昧なまま契約すると退去時にモメる原因となります。契約書の条項とあわせて必ず確認するようにしてください。



管理の委託先
この物件を管理する会社もしくは管理人です。
これから入居中に起きたトラブルはこちらに連絡するようになります。

共用部分(マンションなどでその建物の入居者全員が使う共用部分。エレベータや建物の通路など)と専有部分(その部屋の契約者のみが使う部分。玄関ドアより室内)によって管理会社が違う場合もありますので、必ず確認するようにしてください。
また、夜間や休日は管理会社が休みの場合もありますので、そのときはどうしたらよいのかも忘れず確認をするようにしてください。



造成宅地防災区域内か否か・土砂災害警戒区域外か否か・津波災害警戒区域外か否か
造成宅地防災区域とは、造成された宅地のうち崖崩れなどの災害が発生するおそれがある区域。
土砂災害警戒区域とは、土砂災害のおそれがある区域。
津波災害警戒区域とは、津波が発生した場合に住民等の生命・身体に危害が生ずるおそれがある区域。

それぞれについて記載されています。
該当する場合は避難場所などを確認すると良いでしょう。



石綿使用調査の結果の有無
石綿とはアスベストのことです。

石綿は耐火性、断熱性などを有しているため広く利用されてきました。しかし、石綿は肺がんや中皮腫を発症する発がん性が問題となり、現在では原則禁止されています。

石綿は、飛び散ること、吸い込むことが危険であるといわれていますが、通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられます。
吹付け石綿は、通常、戸建て住宅では使用されていませんが、マンション等では駐車場などに使用されている可能性があります。

重要事項説明書のこの項目は「売主や貸主に問い合わせた結果、アスベストに関して調査したことがないということであれば、その旨を説明すれば足りる」とされています(アスベストや耐震診断の重要事項説明/全日本不動産協会 )。
石綿の調査は宅建業者自身に義務付けるものではないので、石綿の使用調査をしていなければ「調査していません」でOKということになります。



【参考】



耐震診断に関する事項
いわゆる「旧耐震基準」に基づき建築された建物が対象になります。
具体的には、建築確認済証の交付年月日が昭和56年(1981年)5月31日以前の建物がこれに該当し、これ以降は「新耐震基準」となり、説明対象外となります。

旧耐震基準は震度5強程度、新耐震基準は震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されています(不動産用語集/不動産流通研究所)。
ちなみに阪神淡路大震災と東日本大震災は共に最大震度7です。

この説明義務については、売主及び所有者に耐震診断記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合及び管理業者にも問い合わせた上で、存在しないことが確認された場合は、その照会をもって調査義務は果たしたことになります(アスベストや耐震診断の重要事項説明/全日本不動産協会 )。



備考・特約事項
その他特約事項などが記載されています。
重要なことがしれっと書かれていることがありますので注意してください。


賃貸借契約書

建物賃貸借契約書は、今回の賃貸借契約の条文が記載されています。

重要事項説明書と内容がかぶる箇所もありますが、細かい決まりから重要なことまですべて書かれていますので必ず目を通し、不明な点はかならず質問するようにしてください。