賃貸借契約に必要とされるのが連帯保証人。
最近では連帯保証人代行の会社も増えてきましたが、それでも賃貸借契約の際は連帯保証人の有無を聞かれることがよくあります。
それでは連帯保証人とは何かご存じですか?

あわせて、賃貸借契約時に求められることがある「緊急連絡先」についても説明します。

 

 

【結論】連帯保証人を頼まれたときに知っておいてほしいこと

まずは結論から。

賃貸借契約における連帯保証人とは「何かあったら連帯保証人である私が責任をとりますので、契約者に部屋を貸してください」という意味です。


  • 連帯保証人には契約者と同等の責任が生じます。住んでなくても実際部屋を借りていると同等の責任です。
  • 連帯保証人に一度なってしまったら辞めることは難しいです。
  • 契約者が家賃を滞納したときは連帯保証人に請求がきます。連帯保証人は拒むことはできません
  • 債権(家賃)は毎月発生し、払わない限り雪だるま式に増えていきます(※2020年の改正民法で個人による根保証契約には極度額(上限額)が設定されるようになりました。)
  • 入居者は法律で守られており、連帯保証人や貸主が強制的に退去させるのは困難です。そして入居者が住み続ける限り家賃は発生します。



以下に詳しく説明をしていきます。



保証人とは

まずは保証人について説明します。

保証人にはいくつかの種類がありますが、ここでは単純保証人と連帯保証人を説明していきます。

単純保証人

まずは通常の保証人(単純保証)について説明します。

通常の保証人には、民法により催告の抗弁権(民法452条)、検索の抗弁権(民法453条)、分別の利益(民法456条)が与えられます。

催告の抗弁権とは、保証人が貸主から家賃の請求を受けた場合に「まず先に契約者(通常は借主)に請求してくれ」と主張できる権利です。

検索の抗弁権とは、保証人が貸主から家賃の請求を受けた場合に「契約者は財産を持ってるから契約者の財産を先に処分してからこっちに請求してくれ」と主張できる権利(契約者に財産があるという証明が必要)です。

分別の利益とは、保証人が複数人いる場合は人数で割った金額のみ保証すれば良いことです。例えば借金100万円で保証人が2人なら1人50万円を保証すればよいことになります。



連帯保証人

次に連帯保証人(連帯保証)です。

連帯保証には、前述の単純保証にある催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益は無く、債務者と全く同じ義務を負います。

ですから、契約者が財産をいくら持っていようと家賃の支払を拒否した時は、貸主はいきなり連帯保証人に請求することができます。そして、催告の抗弁権と検索の抗弁権はないので、「契約者に請求してよ」という主張はできません。

また、分別の利益もないので、連帯保証人が複数人いる場合でも、通常の保証人のように頭数で割った分だけ負担すればいいのではなく、そのうちの誰か一人に全額請求をすることができます。

このように、連帯保証人は保証人と比べかなり厳しい義務を負うことになります。

賃貸契約の連帯保証人でいうなら「住んでもいない部屋の家賃数ヶ月分をいきなり請求される可能性がある」ということになります。しかも支払いを拒むことはできません



緊急連絡先とは

最近では、連帯保証人の代わりに緊急連絡先を求められることもでてきました。

緊急連絡先とは、名前の通り「緊急時の連絡先」。保証人ではありません
ですから家賃の支払いなどの金銭的な責任はもちろん無く、保証人になるときには必要な印鑑証明などの提出も不要です。
(もし、実印や印鑑証明などの書類の提出を求められた場合は緊急連絡先ではなく保証人の可能性もありますので必ず確認をしてください)

緊急連絡先になると、契約者や入居者と連絡がとれないときなどに連絡が来たり場合によっては対応を求められたりしますが、義務ではありませんのでできないことは断っても問題ありません。家賃の支払い義務ももちろんありませんので払う必要はありません。

緊急連絡先は、連帯保証人不要システムを利用したときなどによく提出を求められます。
友人知人上司など割と誰でもなれますが、退職などで疎遠になるケースも多いので「できれば身内で」と言われることもあります。



通常、緊急連絡先は連帯保証人と違い大きな被害を被ることはありませんが、契約の内容によっては緊急連絡先の役割が違ってくる可能性もあります。
ただの緊急連絡先だったとしても他人の賃貸借契約に名前を連ねる以上、自分に求められる役割をきちんを理解したうえで署名をするようにしてください。



連帯保証人と緊急連絡先の違い

連帯保証人と緊急連絡先の大きな違いは責任の有無です。

連帯保証人は契約者と同等の責任を負いますが、緊急連絡先は責任はありません。
契約者が家賃を滞納した場合、連帯保証人なら払わなければいけませんが、緊急連絡先なら払う必要はありません。

提出書類も違い、連帯保証人は本人確認のために実印を使い印鑑証明や住民票などの提出を求められますが、緊急連絡先は不要です。印鑑も三文判で問題ありません。



家賃を滞納したら連帯保証人に何が起こるのか

では、実際に契約者が家賃を滞納した場合どうなるのか、よくある一例を紹介します。
あくまで例なので、すべてがこうなるわけではありません。ここでは契約者が部屋に住んでいるものとします。


  1. 連帯保証人を頼まれ了承します。賃貸借契約を締結後、契約者が入居開始します。
  2. 契約者(=入居者)の家賃の滞納がはじまります。貸主は契約者に家賃の催促をします。
  3. 何度催促をしても契約者は家賃を払いません。仕方がないので貸主は連帯保証人に催促します。
  4. 驚いた連帯保証人は契約者に連絡をしますが、「お金がない」などの理由で家賃を払ってくれません。
  5. 連帯保証人は貸主に説明します。「こちらもお金がない」「契約者に請求してくれ」などがよくある連帯保証人の言い分ですが、連帯保証人には催告の抗弁権(「契約者に請求してくれ」という権利)、検索の抗弁権(「契約者の財産を処分してからこちらに請求してくれ」という権利)はありませんので、この言い分は通りません。連帯保証人には払う義務があります
  6. 一度家賃が遅れると、慢性的に支払いが遅れていくパターンに陥りがちです。それにつれて連帯保証人への家賃の請求も増えていきます。
  7. この時点で退去してくれればいいのですが、毎月の家賃もままならない契約者に引っ越し費用を捻出できるはずもなく、あいかわらず家賃は遅れたり払わなかったりが続きます。
  8. 「今回だけ家賃を払ってあげるけど、後はもう知らないよ。これで家賃の滞納がなくなるからこれからは毎月きちんと払ってね」などと言って連帯保証人は家賃を払いますが、だいたい今回だけでは終わりません。また滞納します。
  9. 徐々に連帯保証人への家賃の請求が増えていきます。連帯保証人には催告の抗弁権(「契約者に請求してくれ」という権利)が無いので、貸主は契約者にはほとんど請求をせず連帯保証人に直接請求することもあります。貸主にしてみれば、いくら請求しても払わない契約者より払ってくれる連帯保証人に請求したほうが効率が良いからです。
  10. 悪質な契約者だと、「連帯保証人が払ってくれるから自分は払わなくていいや」とますます家賃を滞納します。
  11. 普通賃貸借契約の場合、通常2年で契約満了となります。「これで連帯保証人が終わる!」と思うかもしれませんが、「法定更新」というものがあります。借地借家法では「契約更新をしない場合は以前の契約と同一条件で契約更新」とみなされるのです。家賃滞納者はだいたい契約更新手続きを行わないので(書類を無視する)、前回の契約内容が引き続き適用されます。つまり連帯保証人は終わらないのです。

※2020年の改正民法で個人による根保証契約には極度額(上限額)が設定されるようになりました。


これを読むと「貸主は何をしているんだ。さっさと退去させろ」と思うかもしれませんが、なかなか簡単にはいかないのです。

契約者は借地借家法で守られているので、「家賃を滞納したから今すぐ退去してね」とはできません。
退去させるためには、まずは何度も契約者に連絡をして「何度も請求しているのに払ってくれない」という実績を作らなければならず、これに数ヶ月を要します。
家賃の滞納や遅延が続き、いよいよ退去しかないとなったら、弁護士を頼んだり、少額訴訟を起こしたりして本格的な解決に向けて動きます。



連帯保証人を辞めることは難しい

賃貸借契約の連帯保証人を辞めることは難しいです。

「何かあったら連帯保証人の私が責任をとるから、契約者に部屋を貸してほしい」というのが連帯保証人だからです。
ですから、実際に契約者に何か起こったときに責任をとらず「やっぱり無理。責任取れない。連帯保証人辞める」は通らないのです。

連帯保証人を辞めるには、貸主の合意が必要です。連帯保証人の意向だけでは辞めることはできません。特に、毎月債権(家賃)が発生する賃貸借契約の場合、債権者(貸主)が了承することは難しいでしょう。



「今すぐ連帯保証人を辞めたい」はまず無理

すでに述べている通り、基本、連帯保証人は辞められません。
辞めるにしても貸主の同意が必要です。

どうしても今すぐ辞めたいのなら、代わりの連帯保証人を探すことができれば叶うかもしれません。
その場合は貸主の審査が必要で、支払能力や身元がはっきりした連帯保証人でないと貸主から断られる可能性が高いと思われます。

連帯保証人を代行してくれる賃貸保証会社がありますので、うまく行けばそちらに移行して連帯保証人を辞めることができるかもしれません。
ですが、貸主側にしてみれば連帯保証人は何人いても困ることはないので、賃貸保証会社を使用しても連帯保証人はそのまま、というケースもありえます。

どちらにしろ一度管理会社(貸主が直接管理する場合は貸主)に相談をしてみてください。



賃貸借契約の更新時期に連帯保証人は辞められるか

「賃貸借契約は通常2年更新だから、2年我慢して契約が満了したら連帯保証人を辞められる」と思っている方は多いですが、残念ながらこれは間違いです。

普通賃貸借契約の場合「法定更新」というものがあるためです。

普通賃貸借契約(一般賃貸借契約)とは一番ポピュラーな賃貸借契約で、「賃貸借契約の種類なんてわからないよ」という方の場合、その契約は普通賃貸借契約(一般賃貸借契約)の可能性が高いです。

法定更新とは「契約満了日が過ぎても契約更新をしないときは以前の契約と同一条件で契約を更新したとみなす」ことです。
ですから連帯保証人がいくら契約更新の手続きを拒否しても、契約者が新たに賃貸借契約を締結し直さない限り、自動で更新となり引き続き連帯保証人となってしまうのです。

なぜかというと、賃貸借契約は契約期間の定めがあっても更新をして長期間住むのが一般的なため、更新時に保証人の保証意思の確認をしなかったとしても、保証人は更新後に生じた賃貸借に基づく賃借人の債務についても責任があると解されているためです。

賃貸借契約に「更新後は連帯保証人の責めを免れる」等、更新後の責任を否定する記載があれば連帯保証人を免れることができますが、契約時に借主側から要望があったら特約として契約書にいれるのが一般的なため、通常の賃貸借契約では記載されていることはほとんどありません。
ですから、一度連帯保証人になってしまったら契約者が退去するまで辞めることはできないと思っていたほうが良いでしょう。

賃貸借契約の種類が定期借家契約ならば、更新はなく、契約満了で終了となりますので、連帯保証人はそこでおしまいになります。

まずは、自身が連帯保証人をしている賃貸借契約の内容を確認しましょう。



連帯保証人を辞める方法

では実際、連帯保証人を辞めるためにはどうしたらよいかを具体的にまとめていきます。

2020年に改正民法で連帯保証人に限度額が設定されるようになりましたので、まずは自分の限度額について確認をしておきましょう。
すでに連帯保証人として入居者のかわりに費用を負担していた場合は、その金額を調べ、自分が負担すべき限度額がいくら残っているのかを管理会社とも確認し合いましょう
立て替えた金額が限度額を超えた場合、それ以降は立て替える必要はなくなります。



新しい連帯保証人を探し、賃貸借契約を締結し直す
新しい連帯保証人で、新たに賃貸借契約を結び直す方法です。新しい賃貸借契約には一切関わらないようにしましょう。
新しい連帯保証人で新たに賃貸借契約を無事締結することができたら、連帯保証人から開放されます。

まずは、賃貸保証会社を当たってみましょう。
賃貸保証会社で連帯保証人が不要なプランを探します。賃貸保証会社は管理会社に相談してみましょう。
現在、賃貸保証会社を利用している方でも、連帯保証人不要プランに移行できないか確認しましょう。

もしそういったプランに加入できるのであればすぐ加入しましょう。費用をこちらが負担しててでも加入しましょう。

ですが、通常、家賃延滞者は賃貸保証会社への加入は断られるケースが多いです。連帯保証人が不要なシステムは特に厳しいでしょう。
その場合は、新しく連帯保証人を探さなければいけません。

新しい連帯保証人探しは、おそらく管理会社も貸主も入居者も誰も手伝ってくれないでしょうから、一人でやらなければいけない羽目になると思います。
また、連帯保証人は誰でもよいわけではなく、連帯保証人を見つけても貸主が了承しなければ認められません。無職だったり年金生活だったりすると貸主側から断られるケースが高いです。



裁判を起こして、退去をさせる
連帯保証人を辞めるのが無理なら、退去させるしかありません。

とはいえ、借地借家法で守られている入居者を退去させるのは難しいです。
家賃の延滞が数ヶ月に渡るなど明確な理由があるのなら、裁判で退去に持ち込ませることができます。
裁判は、弁護士に依頼せず個人で少額訴訟を起こす方法もあります。

ちなみに、裁判で勝っても、合法的に退去させる権利を得るだけで、必ず退去させることができるわけではありません。
入居者が居座り、退去しないことも少なくありません。
その場合は、明け渡しの強制執行を行うことになりますが、これには期間と費用が必要になります。



こちらが費用を負担して退去してもらう
裁判などはせず、退去に伴う費用をこちらが負担して入居者に退去してもらう方法です。
つまりは、入居者にお金を払って退去してもらうわけです。

どのみち最後は連帯保証人としてお金を支払わなければならないのなら、貸主への家賃として延命処置に使うのではなく、入居者への退去費用として使ってきっぱり終わらせようという考え方です。

入居者にしてみれば、お金がないから家賃を延滞して、退去したくとも引っ越すお金がないのが現状です。
ですから、入居者に「費用は負担するから退去してくれ」と頼むのです。

入居者の了解を得たのなら、管理会社や貸主に連絡をしましょう。管理会社も家賃延滞には困っているはずですので協力をしてくれると思います。

これを行うときは、入居者へ十分な説明をし承諾を必ず取るようにしてください。一筆書いてもらってもいいかもしれません。
入居者に任せるとおそらく何も行動しないので、こちら側が積極的に動いて引っ越しさせましょう。

ちなみに、弁護士からも似た話を聞いたことがあります。

弁護士に頼んでも、時間もお金もかかる上に必ず退去させられるとは限らないのだから、入居者に「敷金(貸主向けの話だったので)を全額返すから、そのお金で引っ越してください」と頼んだほうが、結局は時間もお金も安く上がりますよ

というものでした。
お金に困っている入居者に現金を渡して、はたしてちゃんと引越し費用に使ってくれるのだろうかという疑問はありますが、納得したのを覚えています。

おそらく、いずれを選んでも、費用はそれなりにかかります。
連帯保証人としての保証限度額とも比較して、一番マシなものを選択するしかありません。



連帯保証人になるときにやっておくべきこと

連帯保証人が危険なのはわかっているけど、やらなければいけないときがあるかもしれません。
そんなときの自己防衛をご紹介します。

ポイントは「逃げ道を作っておくこと」

連帯保証人は契約者と同様の責任を負うという非常に危険なものです。リスクを極力回避できるよう対策をとっておきましょう。

契約書に印鑑を押したあとでは変更はできません。必ず捺印の前に確認をするようにしてください。

賃貸保証会社で代用できないか確認をする
まず最初に確認するのは、本当に連帯保証人が必要かです。

最近は賃貸保証会社も多数存在し、賃貸借契約の際は賃貸保証会社の加入が必須の契約も多くなりました。
賃貸保証会社に連帯保証人業務を依頼することはできないのか確認をしましょう。

賃貸保証会社には複数の保証プランがあることが多いです。
保証会社によって保証内容は違いますが、保証会社にも連帯保証人を立てなければいけないプランや、保証人がまったく不要なプランなどいろいろあったりしますので、仲介業者に確認をしてみましょう。多少高額でも保証人不要のプランがあるのならこちらが費用を負担してでもそのプランに加入することをおすすめします。

保証人が不要の場合は代わりに緊急連絡先を求められることがありますが、緊急連絡先は保証人ではないので重い責任を求められることはありませんが、入居者になにか合ったときに問い合わせの連絡がくる場合があります。

確認をして「連帯保証人は必須」だった場合でも賃貸保証会社には必ず加入してもらいましょう
費用はかかりますが、万が一のときには家賃を立て替えてくれたりと非常に頼りになります。

契約書に更新後は保証人を辞めることを明記する
建物賃貸借契約の連帯保証人で怖いことのひとつは延々と契約更新される可能性(法定更新)があること。ですから、契約期間が満了になったら連帯保証人をやめられるように対応しておきましょう。

通常、部屋を借りるときの契約は「普通賃貸借契約(一般賃貸借契約)」が一般的です。
契約期間は2年でその後は更新をするというパターンで、賃貸借契約というと通常はこれを指します。
更新時に更新手続きを行わなかった場合は法定更新となり、契約が同条件で自動更新されます。

連帯保証人についても、「通常の賃貸借契約は更新を繰り返し長期になることが多い。契約者のために保証人になろうとするくらいだから更新の予測はできるはず。だから、更新時に保証人の保証意思の確認をしなかったとしても、更新後は連帯保証人の責めを免れるとの明示がない限り、保証人は更新後についても責任がある」とされ、連帯保証人も引き続き更新されます。
つまり、通常の契約の場合、契約者が退去するか別の連帯保証人で再契約をしない限り、連帯保証人を辞めることはできないのです。

これを防ぐために、契約書に「連帯保証人の期間は一定期間のみで、更新後は連帯保証人の責任を免れる」旨の特約を入れるようにします。

この特約を入れるには、契約の仲介に入る不動産会社に話をしてして、契約書に特約として入れるよう依頼してください。
契約者に依頼すると話がズレる可能性があるので、直接会社に連絡をし対応してもらったほうが良いです。

更新時に揉める可能性がありますので、契約者にもそのことをきちんと説明をしておきましょう。


※こちらの普通賃貸借契約に特約をつける方法より、下の定期借家契約にする方法のほうが一般的です。




【参考】

定期借家契約にする
契約の種類自体を変えて、必ず契約が終了するようにする方法もあります。「定期借家契約」です。
上記の普通賃貸借契約に特約をいれる方法よりも、こちらの定期借家契約のほうが確実でおすすめです。

一般的な賃貸借契約は普通賃貸借契約といい通常2年ごとに契約を更新しますが、定期借家契約はこの更新がなく、契約満了とともに契約が終了します。ですから、契約が満了すれば確実に連帯保証人を辞めることができます

定期借家契約の進め方は普通賃貸借契約とほとんど同じですが、契約満了時のトラブルを防ぐために「契約の更新がなく期間満了で契約が終了すること」などをまとめた書面(借地借家法38条に則っているため通称「38条書面」といわれています)を作成し、説明をしなければいけないきまりになっています。書面の交付と説明、両方がないと定期借家とは認められず普通賃貸借契約になり法定更新が適用されてしまいますので、注意してください。

定期借家契約にしたいときは、契約者と賃貸仲介会社に「定期借家契約なら保証人になってもいい」と伝えるだけです。あとは仲介会社が定期借家契約で手続きをすすめてくれるはずです。

定期借家契約をするときは契約期間を定めなければいけませんが、定期借家契約は原則として中途解約はできません。
ですから契約期間は、それを踏まえた上で自分が連帯保証人として責任を持って対応できる期間を指定しましょう。ちなみに居住用の場合は2年契約が多いようです。
なお、一般的な賃貸物件を定期借家契約とする場合は中途解約についてあらかじめ契約書で取り決めをしていることが多いですので(○ヶ月前までに通知をすれば中途解約可など)、そちらも確認しておきましょう。

契約書が手元に届いたら、契約書に更新がないことが記載されているか、38条書面がちゃんとあるか(ない場合は契約書等にきちんと記載されているか)を確認して署名をするようにしましょう。
これらが揃っていないと定期借家契約とはみなされず、法定更新が適用されてしまいますので慎重に確認をしてください。

契約書は一度仲介会社に返送すると思いますので、念のために契約書等のコピーをとっておくのも良いと思います。




【参考】

契約書のコピーをとる
賃貸借契約の場合、契約書は管理会社(貸主)と契約者のみに渡され、連帯保証人の手元にはないことがあります。
契約書など書類一式はコピーをとり、自分でも保管するようにしましょう。

もしコピーを取り忘れたら、管理会社に連絡をし送ってもらうようにしてください。

問題が起きたらすぐ連絡をもらえるようにする
管理会社(貸主)によっては、物事が大きくなるまで連帯保証人に連絡をしないケースがあります。
「実は入居者が一年間家賃を滞納している。連帯保証人だからすぐ払って」と急に言われても困りますので、何か問題が起きたらすぐ連絡をしてもらい状況を把握するようにしましょう。

また、2020年改正民法により、保証人に対する情報提供義務が新設されました。貸主側からの連絡を待つだけではなく、こちらからも時々連絡をし、状況を確認するようにしましょう。
払った費用は把握しておく
連帯保証人として支払う必要が起きた場合は、必ず請求書を発行してもらい、支払い後も領収証やATMの振込明細などは必ず保管しておきましょう。




これらの事項は連帯保証人のリスク軽減にはなりますが、連帯保証人の責任を免れるわけではありません。連帯保証人になるには相応の覚悟を持って引き受けるようにしてください。

特約をつけるのも定期借家契約にするのも、それほど手間もかかりませんし難しいことではありません。ですから、もし契約者や仲介業者に断られることがあるのなら連帯保証人にはならないほうがいいです



連帯保証人になるために必要な書類

連帯保証人になるときに提出する書類は、保証人の印鑑証明、住民票、収入証明などです。

印鑑証明に登録された実印を契約書に押し、なおかつ印鑑証明も提出することで、本人が連帯保証人になることを承諾した証明としています。



2020年 改正民法による保証人制度の変更

2020年4月に改正民法が施行され、不動産賃貸借契約の連帯保証人制度についても変更が入りました。

極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効
「根保証契約」とは、一定の範囲に属する不特定の債務について保証する契約をいいます。
例えば賃貸物件の連帯保証人のような「賃貸借契約に関わるものをまとめて保証」するものは、保証人となる時点では現実にどれだけの債務が発生するのかがはっきりしません。そのため、将来、連帯保証人が想定以上の債務を負う可能性がありました。

今回の改正で、個人による根保証契約にはすべて極度額(上限額)が必要となり、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効となりました。
これにより、個人が連帯保証人を頼まれた時には、自分はどのくらい保証しなければならないかがわかり、連帯保証人を受けるかどうかの一つの判断基準となります。

2020年4月の改正民法施行以前に締結された賃貸借契約は限度額は設定されていないのがほとんどです。
これについては、施行前に既に締結している賃貸借契約は、改正民法施行後に初めて合意更新がされるまではそのまますべて有効となります。賃貸借契約に基づく債務を保証する保証契約も、改正民法施行後に初めて保証契約が合意更新されるまでは極度額の定めがなくても有効です。(民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A(pdf形式)/ 国交省)
つまり、法定更新の場合は改正民法施行後でも極度額の定めがなくとも有効となりますので注意してください。
保証人に対する情報提供義務の新設
主債務者の委託を受けて保証人になった場合には、保証人は債権者に対して,主債務についての支払の状況に関する情報の提供を求めることができるようになりました。

これにより、連帯保証人は、契約者の家賃の支払状況などについて貸主や管理会社に情報提供を求めることができるようになり、また求められた貸主や管理会社は遅滞なく回答しなければならないこととなりました。
特別の事情による保証の終了
個人が保証人になる根保証契約については、保証人が破産したときや主債務者又は保証人が亡くなったときなどは、その後に発生する主債務は保証の対象外となりました。




【参考】