転勤や住み替えなどで借りていた部屋を解約し、退去することになったときの手続きの流れです。

 

 

解約と退去の違い

まず、解約と退去の違いについて確認です。


  • 解約 = 賃貸借契約を解除すること。
  • 退去 = 部屋を退去すること。

賃貸借契約の解約とは、その部屋を借りる契約を解除することです。その日までに部屋を明け渡さなければいけません。
解約日以降も部屋に荷物を置いたままだったり鍵を返却しなかったりした場合は違約金を請求されることがあります。

退去はその部屋から引っ越すことで、解約日より前であるならば契約者の都合の良いときに退去できます。荷物を運び出した後の部屋の中に何もない状態でも解約日までは鍵を返却する必要はありませんし、契約者が今までどおり自由に使えます。

このように、解約と退去は本来別のものですが、賃貸管理界隈では言葉の使い方が曖昧なことがよくあります。
言葉の行き違いの防止など理由はいろいろあると思いますが、退去日=解約日の意味で話をする管理会社もありますので注意してください。



退去が決まったら まず行うこと

引っ越しなどでその物件から退去することになったときは、まず最初に賃貸借契約書や重要事項説明書を確認しましょう。

特に確認すべき項目は次の通りです。

契約更新日
次回の契約更新日が近い場合は早めに解約するなどして、更新料等の無駄な費用がかからないようにしましょう。
賃貸借契約の更新だけでなく、火災保険や賃貸保証会社など更新が必要な契約が他にもありますので、契約内容をチェックして漏れがないようにしましょう。
解約の連絡期限
「解約(退去)の○ヶ月前までに連絡」などと記載されています。
解約の連絡先、連絡方法
解約時の連絡先が記載されています
その他解約に関する契約内容
「解約月(退去月)は家賃の日割り計算をしない」「短期解約は違約金が発生」などの特約が記載されている場合があります。



各項目の詳しい内容は下にまとめています。



契約書のほかに入居時に撮影した部屋の写真、部屋探しのときにもらった物件資料などがありましたら引っ越し荷物に入れず手元に置いておくようにしてください。退去時の立ち会いなどで必要になることがあります。



更新時期の確認

まずは契約更新日を確認しましょう。

更新が必要なものは賃貸借契約の他にも火災保険や賃貸保証会社(保証人不要システム)などいくつかあります。契約時の書類を一通りチェックするようにしましょう。

更新には更新料等がかかることが多いので退去時期と更新時期が近い場合は注意が必要です。

更新以外にも、入居期間が短い場合は短期解約の違約金がかかることもあります。



解約の連絡は誰にすればいいの?

賃貸借契約の取り交わしをしたときに「重要事項説明書」という書類も同時に取り交わしをしています。
この書類の「解約時連絡先」欄に記載されています。「解約時連絡先」がない場合は「管理の委託先」に連絡してください。

「解約時連絡先」も「管理の委託先」もわからない場合は、現在の家賃の支払先に問い合わせをしてみてください。

退去の連絡方法も電話や文書などいろいろありますが、まずは「解約時連絡先」に電話をするのが良いと思います。

なお、退去時に管理会社の立会が必要な場合があります。



解約の連絡はいつまでに?

解約の連絡については「重要事項説明書」または「賃貸借契約書」に「解約(退去)の○ヶ月前までに連絡する」などと記載されています。
1~2ヶ月前までに連絡することを条件としていることが多く、その期限までは家賃がかかります
つまり、いきなり「明日解約します」と連絡して実際に部屋から荷物を全部出して鍵を返却したとしても、家賃はその後も定められた期限までは払わなければいけないことになります。

また、連絡の際には解約日を伝えますが、解約日は一度決めると変更は難しくなります。
特に解約日を延ばす場合は、次の入居者募集との兼ね合いで断られることがありますので、必ず確実に退去している日を解約日にしてください。



退去日は未定なんだけど

管理会社に伝えるのは退去日ではなく解約日になります。

引越し業者がまだ決まらないなどで退去日(荷物を全部運び出す日)が確定していない場合は、確実に退去している日を解約日にして管理会社に連絡をしましょう。
ただし、解約日までは家賃がかかってしまうので注意が必要です。

また、退去時に管理会社の立ち会いが必要なことがあります。
この場合は、解約日の他に立会日を決めなければいけません。立会日は入居者が希望の日にちを指定できますが、繁忙期などは管理会社も立会が立て込んでいるため、こちらの希望通りの日にできない可能性もありますので、早めに連絡をしておきましょう。
立会日がある場合、解約日まで日にちに余裕があっても立会日に鍵を返却しなければいけないことがあります。

管理会社は解約の連絡が入った時点で、次の入居者募集に向けて動き出します。
早ければ解約日の翌日からリフォーム工事などのスケジュールを埋めていきますので、後から「やっぱり解約日を延期してほしい」と言っても断られることがあります。
解約日はよく考えて余裕を持って日にちを設定してください。



解約月の家賃はどうなるの?

解約の連絡は家賃にも関係してきます。

解約月は家賃の日割り計算はしないという物件もあり、場合によっては連絡が遅れると一ヶ月以上も余計に家賃を払わなければいけなくなる可能性もでてきます。
契約書等に記載の退去連絡期限を確認し、家賃をできるだけ無駄にしないようにしましょう。

解約月の家賃の扱いについては契約書に記載されています。
「解約月(退去月)は日割家賃にしない」等の記載がない場合は、通常は解約日までの日割り家賃となります。



「解約月は日割家賃にしない」とは、例えば解約日が15日でも、15日までの日割家賃ではなく一ヶ月分の通常の家賃がかかってしまうということです。

具体例で説明します。

  • 家賃は30,000円(日割家賃は1,000円/日)
  • 解約希望日は11月15日
  • 退去は1ヶ月前までに予告(10月15日期限)

このような条件だった場合の解約時の家賃です。
なお、契約内容によって計算方法に違いがでる場合がありますので参考程度でご覧ください。

解約月(退去月)が日割計算の契約の場合

10月1日(解約予告期限より前)に連絡した場合
11月(解約月)は15日までの日割家賃(15,000円)
※10/1の一ヶ月後は11/1なので、11月は解約希望日の15日までの日割家賃
10月25日(解約予告期限が過ぎて、解約する月の前月)に連絡した場合
11月(解約月)は25日までの日割家賃(25,000円)
※10/25の一ヶ月後は11/25なので、11月は25日までの日割家賃
11月1日(解約予告期限が過ぎて、解約する月)に連絡した場合
11月(解約月)は通常家賃(30,000円)
12月(解約後)は1日の日割家賃(1,000円)
※11/1の一ヶ月後は12/1なので、11月は通常家賃、12月は1日までの日割家賃

解約月(退去月)は日割計算としない契約の場合

10月1日(解約予告期限より前)に連絡した場合
11月(解約月)まで通常家賃(30,000円)
※10/1の一ヶ月後は11/1だが、解約月の日割計算はしないので11月は通常家賃
10月25日(解約予告期限が過ぎて、解約する月の前月)に連絡した場合
11月(解約月解約)まで通常家賃(30,000円)
※10/25の一ヶ月後は11/25だが、解約月の日割計算はしないので11月は通常家賃
11月1日(解約予告期限が過ぎて、解約する月)に連絡した場合
11月(解約月)は通常家賃(30,000円)
12月(解約後)も通常家賃(30,000円)
※11/1の一ヶ月後は12/1。解約月は日割計算しないので11月、12月も通常家賃がかかる


転勤の内示がギリギリにしかこないんだけど

職場によっては「異動の内示が3月で4月から新しい職場」など、ギリギリまで異動がわからないということもよくあります。
こうなると一ヶ月前までに退去予告は無理ですので、どうしても余計な出費がかかってしまいます。

そんなときは管理会社に「3月末で退去するかわりに4月分の家賃を免除してほしい」と交渉をしてみてください。

例えば3月15日に異動の内示が降りて引っ越しが決定し、管理会社に連絡をしたとします。
この場合、「一ヶ月前解約予告で解約月は日割家賃」の条件でも4月15日まで家賃がかかってしまいます。そこで「契約書通りだと家賃が4月15日までかかるので解約日は4月15日にするが、もし、4月分家賃を免除してくれるのなら3月中に解約する」などと相談をしてみてください。

繁忙期は「遅くとも4月上旬までに入居できる部屋」を条件に探している人が圧倒的に多く、入居可能日が4月中旬以降というだけでその物件は部屋探しの候補から外れてしまいます。
学生向け物件だと入学時期に入居者が決まらないとそのまま一年ずっと空室ということもありえるため、貸主側にとって繁忙期直後の解約は非常に困るのです。

そこで前述のような交渉になります。

繁忙期以外は、切羽詰まった部屋探しをしている人は少ないので断られることが多いと思います。
繁忙期でも、この交渉は結果として貸主側に折れてもらうことになるので断られる可能性も高いです。
「ダメでもともと」ぐらいの感覚で交渉してみてください。



「退去時の立会い」とは何をするの?

解約の連絡をすると、退去時の立会いについて話をされることがあります。
退去時の立会いとは、貸主と契約者の両者立ち会いのもと退去後の室内を確認することです。

退去立会いの一般的な流れは、荷物をすべて運び出した後の部屋で、貸主(管理会社)と契約者が実際の部屋の汚れや傷を見ながら「これは入居前からあった汚れ」「これは入居者がつけた傷」などとお互いに確認をし、合意をしたらその場で書類の作成、契約者は鍵を返却して終了となります。
立会い後はそれ以降の汚損破損を防ぐため、解約日前であっても部屋の立ち入りを禁止し鍵の返却を求められることがあります。



立会いに持参しておくとよい物は

  • 契約書、重要事項説明書
  • (入居時に撮影していたなら)入居時の室内写真
  • 部屋探しのときにもらったファクトシートなどの物件資料

事前に目を通して関係がありそうな項目をチェックしておきましょう。



貸主と契約者が一緒に部屋の現状を確認することで、敷金精算をスムーズに行うのが退去立会いの主な目的です。
ですから立会いでの話し合いがそのまま敷金の返還金額にも直結します。

立会いでは話し合いが難航することもめずらしくありません。特に長期間住み続けた場合は管理会社側でも入居時のことを覚えている人は少なくなり、言った言わないの水掛け論になることもあります。対策として、持っている資料はすべて持参し、証拠を提示しつつ少しでもこちらが優位になるように話し合いを進めていきましょう。

立ち会いの最後に署名や印鑑を求められることもあります。署名後は「やっぱりあの傷は入居前のものだった」と言っても変更は効かない可能性が高いですので、署名や印鑑はよく考えて行ってください。



解約を取り消したい場合

退去するつもりで貸主側に解約の申し入れをしていたが事情が変わって引き続き入居したい場合は、すぐに管理会社に連絡を入れてください。

ただし、次の入居者がすでに決定済みなど、場合によっては継続入居を断られる可能性もあります。



退去準備

解約日が決まったら、退去へ向けて引越の準備を行いましょう。
特に春は混雑し、引越し業者などの予約がとれない可能性もあります。引越し準備には早めの行動が大切です。